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乾癬について(6) 20世紀終わりごろからの免疫治療の勃興

こんにちは. 京阪本線野江駅, JRおおさか東線野江駅より徒歩2分 のえ皮フ科クリニックです.

20世紀の終わりごろの乾癬治療はステロイドの外用が基本であり, その副作用(皮膚の萎縮など)を軽減する目的で活性型ビタミンD3外用薬も用いられるようになりました. 1970年代中頃, PUVA療法という光感作物質(ソラレン)を内服・外用後UVAを照射する光線療法がおこなわれていました. その副作用(発がん性など)を軽減するためにPhillips社がナローバンドUVBを開発し現在も治療に用いられています. さらに内服療法としてビタミンA誘導体やシクロスポリン, メソトレキセートなどが用いられており(今も用いられています),  こういった方法はおそらく中等症までの乾癬には有効なのですが, 重症乾癬のコントロールには不十分であることが多かったのも事実です. そのことから欧米の皮膚科医たちは新しい治療にbreakthroughするために新たな免疫治療のアプローチを試みるようになりました.

上に示すのが免疫治療のアプローチの曙光ともいえる業績で, Berlin Humboldt大学皮膚科のSterry教授たちによるIL-10を用いた研究です. IL-10とは当時免疫応答や炎症反応を抑制するサイトカインとして脚光を浴びており, そのサイトカインを乾癬の病巣内に局所注射して反応を観察したのです. その結果左上の投与前の状態から, 右下の投与後の状態に改善を示したのです. この業績は1998年一流の臨床研究誌であるJournal of Clinical Investigation誌に掲載されました (J Clin Invest. 1998;101(4):783-794. https://doi.org/10.1172/JCI1476.). シンプルな研究ですがステロイドを使用せずタンパクを投与するだけで乾癬が改善するなど私などは驚きをもってこの論文を読んだものです. その後今世紀に入りさらに一歩進んだ免疫治療の論文が発表されます.