乾癬について(4) Nickoloffの歴史的実験その1
- 2023年9月29日
- 乾癬の分子標的薬治療
こんにちは. 京阪本線野江駅, JRおおさか東線野江駅より徒歩2分 のえ皮フ科クリニックです.
昨日の最後に挙げましたNickoloffの研究に着目します. Nickoloffは乾癬がヒト以外の動物で再現できないか模索します. この研究の後世界の研究者たちが遺伝子改変マウスを用い乾癬の病態を再現しようと試み, マウスにおいて多くの乾癬様の皮疹の再現に成功します. その場合多くは1つ(あるいは複数ですが多数ではない:よってあくまでマウス本来の遺伝的背景は病態の再現に必須です)の遺伝子を改変することにより乾癬皮疹の再現を試みますが, 彼らはそもそも免疫的にほぼ何もない状態でヒトの細胞を持ち込み乾癬がマウスで再構築(再現)できるかという試みを行いました. そのために用いたのがSCIDと呼ばれる実験マウスです. SCIDは重症複合型免疫不全(Severe Combined Immune Deficiency)の略でT細胞系もB細胞系も両方の免疫が欠損しています. いわゆる獲得免疫はこの2つの細胞集団を介し行われますので, ほぼ免疫を持たない状態といってよいと思います. この実験を用いNickoloffは歴史に残る証明をなすのです.