乾癬について(3) 20世紀後期の免疫学的側面からの理解
- 2023年9月27日
- 乾癬の分子標的薬治療
こんにちは. 京阪本線野江駅, JRおおさか東線野江駅より徒歩2分 のえ皮フ科クリニックです.
20世紀前半までは乾癬に関しては「非特異的な炎症性皮膚疾患」としてしか捕らえられていなかったのですが, 20世紀後半になってようやく乾癬の免疫学的側面についての疑問がおこるようになりました. 実際の出来事を順に以下に示すことにします.
- 早期乾癬皮疹にTリンパ球が集積している.(Braunfalco & Christophers, 1974)
- 乾癬皮膚に活性化したHLD-DR陽性免疫細胞を認める.(Baker, 1983)
- HLA-DR分子は乾癬皮膚のケラチノサイト細胞表面に認める. すなわち, 乾癬皮膚においてケラチノサイトがTリンパ球を活性化しうることを示唆する.(Gottlieb, 1986)
- 非ランゲルハンス細胞性の抗原提示細胞を乾癬皮膚において認めた.(Baadsgaard, 1989)
- 乾癬皮膚においてICAM-1分子とインターフェロンガンマ誘導性タンパク10を表現するケラチノサイト認めた.(Gottolieb, 1990)
1980年代に少しでも免疫学をかじった皮膚科医であればそのころ欧米の免疫皮膚科学で活躍したレジェンド達の名前を見て懐かしくなるものと思います. 乾癬という疾患を免疫学的側面から理解しようとする試みは20世紀終わりの次の研究をもってほぼ最終章となります.
『乾癬患者から獲得したCD4+Tリンパ球を, 免疫不全マウス(SCID)に移植した前乾癬皮膚(いまだ乾癬を発症していない正常に見える皮膚)に移注したところ乾癬が再現された (Nickoloff & Wronesmith, 1999)』
このNickoloffの業績に関し次回見てゆきましょう.