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鳥ダニについて(5):鳥ダニの国際分布と拡大について

こんにちは。京阪本線野江駅、おおさか東線野江駅から徒歩3分 のえ皮膚科クリニックです。各国には特有の鳥類が住み着いており、その鳥類が持つ特有の鳥ダニが病原性を発揮すると考えられています。今回紹介する論文はハンガリーを研究のポイントとし、鳥ダニの分布と由来を検討したものです。

上の図では屋根の軒下 (a)で窓の上に鳩が作巣しており(b)、そこから這い出た鳥ダニ(c)が部屋の中に侵入し人に皮膚炎を起こしています(d)。著者らはこの鳥ダニについて検討しています。

上の図ではチトクロームc酸化酵素1遺伝子 (cox1)の変異を基礎に鳥ダニを分類しています。この表を見ると赤字で示されたハンガリーのハトやイワツバメで発見された鳥ダニ種の同一種あるいは近縁種がイスラエルやカナダの鳥からも見つかっていることが分かります。著者らは「ハンガリーではイワツバメはアフリカから渡ってくる」ことが知られているので、渡り鳥(渡りツバメ)が媒介する可能性が高く、ハトでの他の鳥ダニ種の道程はカナダのそれと同一でありハトの国際展示会や輸入を契機にハンガリーに持ち込まれたのではないかと推察しています。

最後に別の論文から引用したアジアにおける鳥ダニ種の分布図を示します。日本では鳥アカダニとキタ鳥刺しダニの分布が報告されています。

今後新しい鳥ダニ種が無作為に輸入され新しい感染症を起こさないことを祈ります。

引用文献:

Hornok S, et al. Urban emergence of dermanyssus gallinae lineage L1 and Ornithonyssus sylviarum in Hungary: Phylogenetic differentiation between the roles of migrating vs transported synanthropic birds. Parasites Vectors 2021; 14: 147.

Olivier A & Sparagano E. Parasitic mite fauna in Asian poultry farming systems. Front. Vet. Sci. 2020; 7: 400.